2005年05月01日

恋愛10選 10.本当に愛しています。

「本当に愛しています」

 その言葉は聞こえたのか。四郎さまは笑みを浮かべて見ている。今の大人びた甘さのない顔を見ているのに、はじめてあった幼さの残る顔を思い出していた。

 その体から揺れながら散って行くそれを私は吸収した。

 四郎さまの魂は私の中で吸収される。その度に思い出が広がった。

 何て言う時間だったのだろう。本当に私は毎日生きていた。楽しくて悲しくて切なくて愛しくて。

 四郎さまはもう動かない。

「おやすみなさい」

 四郎さまの魂を力に変えた。鋼の一対の翼が、体を覆う鎧の体。

 もう一度この姿をすることになるとは思わなかった。この姿は死の天使。

 相手は本当の天使だ。天使病で現れたような、サタナエルが作り出した人間の中に組み込まれた光が活性化したものではなく、本当の大天使。

 よほどこの世界の律を彼は守りたいのだろう。いや、妬み深い彼はもう長い間、耐えていたのかもしれない。自分のものであるそれらが世界を闊歩し、自分が忘れられていくのを。

 そんなこと私には関係ない。今するのは目の前の天使を排除する。

 こちらを見る目が分かった。驚愕が殺意に変わるのはすぐだ。私を見ればそう感じて当然だ。この姿は自分によく似ていることだろうから。

 天使が飛び込んでくる。交わすのはたやすい。だが、後ろのビルには四郎さまが守りたかった人たちがいる。

 四郎さまのいない今、魔力による内部破壊はできない。だから外から全てを破壊する。

 私は大天使を見た瞬間に襲い掛かっていた。少女めいた顔が驚きに満ちた。

「灰は灰に」

 小さく音がした。天使の体が切り裂かれ、いっぺんいっぺんが炎に包まれ落ちてゆく。 

「塵は塵に」
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恋愛10選 09.僕だけの思い出

 最初に会った時は正直、驚いた。小柄な自分と同年代の女の子がここまで動くのが。

 近くで見ればきれいな女の子で、話も上の空だった。

 だから武器の事を言われても彼女のことをさしてしまった。

 雹が突っ込むのを期待してだったが突っ込みはなく女の子は僕のところにきた。

 それでも彼女が言い張るみたいに武器なんて信じられず、そのまま時間は過ぎた。

 でも そういってられなくなった。御使の襲来だ。簡単に負けた。

 自分ではなく彼女が狙われているとしった瞬間、僕は彼女を身につけていた。

 それから戦いが続いた。

 御使いが狙っている彼女を守り戦う。その中で僕は操られて彼女を襲った。

「あなたは主人なのでしょ」

 でも、そんな事をしたのは僕が彼女を抱きしめたかっらだ。でも、その言葉は言っていけないもの。彼女は僕の側を去った。

 そして現れた彼女は彼女がいうような武器としての姿を見せていた。 

 彼女だったのが分かるのはその瞳の色くらい。体は甲冑めいたもので包まれ背中からは鋼の翼が一対。彼女を止めようとした御使いたちは簡単に倒されていく。自分がどうにか倒していた御使いは簡単に倒されて、いや壊れて行く。

 人間が勝てるわけないのに、それでも僕は立った。

 彼女の手をとった。その手は初めてあったときを思い出させた。彼女が一瞬ためらった。

 人間の魔力では構造を壊すほどのものは使えない。だから魔力の向きを変えた。砕けた彼女の鎧の中で見慣れた顔が見えた。

 彼女は泣いていた。この子を泣かしたくなかったのに、僕がしていたのはこの子を泣かす事だったんだと思ったら悲しくて僕も泣いた。
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恋愛10選 08.もう、見たくない

「本当になってしまったんだね」

 その獲物はしぶとかった。私は剣の精。触れたものをすべて切り裂くもの。だが、その獲物は切り裂けない。

 多くの御使いたちを私は滅ぼした。それはもう自然なこと。敵は敵だ。

 しかし、早さも強さもはるかに劣るそれに対して何もできないとは。なんという腑抜けか。

 私は熾天使の瞳から作りだされた最強の存在だ。彼の怨嗟を受けて、あの妬ましいものの作り出した全ての創造物を破壊する。

 距離をとった。全力を解放すればこの場も壊れるが、すべては終わる。

「もう見たくない」

 獲物はこちらが魔力を高めているのに近づいてくる。まったくばかな獲物だ。

「朱に交じり笑う君を」

 魔力の集まった手を握った。獲物の手は傷ついていないわけではなかった。もう腕は裂け血は出ている。どうしてそんなことをするのか。

 意味のないあまたの行為が思い出された。

 私は何をしているの?

 何か悲しくて飛び出して、そうだ私は。目の前それが分かる。四郎さま。

 しかしもう遅い。魔力は解放された。
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恋愛10選 07.なんでこんなことするの?

 逆らえない。

 四郎さまは主だ。だから望まれた事はしなくてはならない。分かっている。でも、それは耐え切れなかった。

 暴れた。そうはいっても私は主に逆らう事はできない。ただ手をばたつかせて距離をとろうとするくらいだ。

 唇が首筋に触れる。魔力を介して四郎さまの意思が分かる。それは今の状況を望んでいた。

「何やってるかこの色ザルが」

 四郎さまが倒れた。

 双葉さまの踵が落ちている。それは四郎さまの意識をあっさり刈り取ったようだ。

「家内法度で色事は不許可ってるでしょ。このサルは。ただでさえ、同棲しているのを、許してやっているのに。前は『彼女は道具だから』とか、いいやがった時は弟がそんな鬼畜になったとは姉は悲しかったものよ」

「あの姉さ・・・」

「言い訳は見苦しいわ四郎」

 双葉さまは四郎さまを引っ張るとどこかに消えていった。

「四郎さま」

 身を整えて外に行くと、双葉さまが四郎さまをつめようというのかドラム缶を用意しているところだった。

「助けてくれ姉さん。出来心なんだよ」

「男はみんなそういうのよ。優しい姉は決して浮かび上がってこないコンクリの配合にしてあげるから。しっかり三途の川を反省の涙で溢れさせてちょうだい」

「双葉さま」

 声をかけると双葉さまは、

「家内法度は絶対だから。でも同意の上でだったら、罪は二人で分け合っても許すけど」

 二人で沈めばどうにか脱出できるだろうか。

「分かりました」

 双葉は邪笑を浮かべ、

「じゃあしょうがないわ。あと、甕星ちゃんが四郎を川にほうり込むだけで許して上げる」

「分かりました」

 私はすまきにされている四郎さまを持ち上げると歩きだした。

「助かったよ」

 その四郎さまの声を黙殺した。今考えているのは川に投げ込む事だけだ。

 最短距離で海老川に到達する。

「なんでこんなことするの」

 出来心と言ったのが頭を回っている。外の事はどうでもいい気がした。

「そっちがそうなら俺はあやまらないぞ」

 四郎さまはこの状況なのに目はまっすぐで、反省の気持ちはないようだ。

「操られたのは事実だよ。でも、俺はキスしたかった。あのそれ以外もしかかったけど」

「四郎さま、私は道具ですから。分かっていただけていると思いました」

 どうしてかここにいたくなかった。真っすぐに自分を見ている目がやるせなくてたまらない。

「君は道具じゃない」

 走り出した私の前に立つのは一人の少年だった。

 まずい。彼は・・・。

「エル、四郎さまを操ったのもあなたなの?」

「操る。彼には一つ二つアドバイスをしただけだよ。君にも必要かもしれないね」

 無言のまま切りかかった。刃と化した腕をエルは受け止めていた。このくらい彼はするだろう。

「堕ちた熾天使の涙から生まれた剣の精よ。君はどうして泣いているか分かるかね。君はそのように作られていないのだ。自然と振る舞いたまえ」

 エルの私と同じ瞳の中に私は落ちていった。
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恋愛10選 06.夏休みのお祭り

 用意された服は浴衣だった。初音さま、四郎さまのお姉様に着付けてもらい外にでる。

 今日は夏祭りだ。

 春から続いた天使病は勢いを止めていた。天使になった人々は外科的に羽をとったりして、巧妙に隠すようになり、街から天使の姿は消えた。

 もともと四郎さまにはそう関係のない話なのだ。巻き込んでしまったのはむしろ私だ。天使病になったものの中で、何かの意思を受けた者たちがいた。それを受けたものたちの一部は神の僕として私を狙ってきた。

 四郎さまはじっとこっちを見ている。

「何かおかしいでしょうか」

「いや」

 四郎さまは黙った。そんな発言に困るくらいおかしいのだろうか。

「四郎、照れてないで。しっかりエスコートね」

「ああ」

 手が差し出された。握られる事はあるけどそれはいつも戦いの場だったからこうされるのが不思議だった。

「いこう」

「え」

「そういうときは黙って手をとればいいの」

 初音さまに言われて手を伸ばした。四郎さまの顔が赤い。

「星祭りっていうんだ。本当は大熊座の、北斗妙見さまって神様のなんだけど、名前がきれいなんで。それらしい名前になったみたいだよ」

「そうですか」

「星は嫌い?」

「好きとか嫌いとか考えた事はありません」

 四郎さまは夕方の光の中で一つ輝く星を指差した。

「あれは金星。日本でも甕星って金星のことなんだ。つまりは明星さ」

「明星ですか?」

 四郎さまは私の目をじっと見ている。

「その名前なのが不思議?」

「ええ」

「自分の顔ってのは見ないもんなんだな。あの星の輝きに甕星の目ににているんだよ」

 金星に似ているのは確かに符合かもしれなかった。私のもともとの名前はあの星に係わり合いを持っている。

「それに明星だから」

「?」

「君がだよ。俺にとって明星なんだ。終わらないと思っていた夜が、君がきてから明けはじめた」
posted by 九十九屋さんた at 08:40| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恋愛10選 05.図書館の一角で

 調べ物は捗っていない。

 四郎さまは書物にかじりついている。ああして目をこらしても、理解できないものはできないのに難儀な事だ。

 中国語なら自力でどうにかなるといって始めたのだが、四郎さまの中国語では手が出せない代物のようだった。

 発見された石板をそのまま写真でとり本にしたものだ。甲骨文字で書かれたそれは難しい事だろう。

 だが、今回の一件にはこれを理解するのが必要だった。

 御使い。そう呼ばれる人々は増え始めていた。天使病とも呼ばれるそれに感染すると文字通り天使となる。背中からは美しい翼が生え、不思議な安らかさを手に入れる。それだけならいい。だが、天使病は人々の中に軋轢を生み出した。天使病になったものの中で、天使になれたものは幸運だった。少なくとも生きている。だが、そこまで到達できなかったものの多くは、失踪を遂げていた。

 石板の内容は天使に関わるものだった。いや、飛天か、迦陵頻伽というべきか。

 今の事件、天使病がはやりつつある今日、同じことが中国で戦国時代の末期に起こったのが分かった。続く泰の時代の思想統制で消し去られず残ったのは、石に彫られていたからだ。

「わからねえ」

 四郎さまは叫ぶとひっくりかえった。幸い入場者が制限される書庫で見ている人間はいない。

 四郎さまと目があった。

「悪い。疲れたなら休んでてくれ」

「何度ももうしましたが、私が人の姿をしているだけなので」

「分かってるんだけどね。どうも、その姿だと」

「武器になっていても構いませんが」

「いいよ。うまい紅茶飲めなくなるし」

 四郎さまは再び書物に挑み始めた。

 何げない時間だった。

 私はせめておいしい紅茶を容れる事にした。
posted by 九十九屋さんた at 08:39| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恋愛10選 04.契約上の恋人

 何をしているのだろう私は。

 目の前を歩いて行く四郎さまを背後から見ながらそう思う。

 いつもの古着ではなく、正装に身を固めた姿ははっきりいって、かなりいい外見だと思う。

 私が魔具で武器であり、狙われているとしってから側から離さなくなった。人殻、人間の姿でいることは困るから、折衷案としてブレスレットになることになった

 だが、今日に限って置いていった。それもこちらが寝ているとでも思ったのかこっそりとだ。まったく不自然だ。

 何かあった時に困る。そう思いついていった。もちろん、人殻を身に着けて人間の姿でだ。

 湾岸のモールを抜け、着いたのは船だった。大型のそれは港に停泊したままで、レストランとホテルになっている。

 入って行くと簡単に通して貰えた。どうもどなたかのお着きと思ってもらえたようだ。

 中では宴が行わていた。

 踊っている人々の中に四郎さまを見つける。踊っている相手は美しい女性だった。

 回りを睥睨する女王の美しさだ。確かにその女性はこの場で誰よりも目立ち、美しい。

 時折四郎さまの耳元で囁くさまは親しげだ。見ているうちになぜかとても空しくなる。

 私は何をしているのだろう?

 空しくなって戻ろうとした時に気づいた。魔力が交じっている。

 まだ微かだがそれは少しづつ濃さを増している。船の上の方から魔力という霧を振りかけているイメージだ。

 それは少しづつ浸透している。だが、誰も気づいてはいない。

 源を見なくてはならない。そう思って外に出る。

 翼の生えた紙がひらひらと宙空を舞っている。呪詛を含んだ紙だ。飛び込んでいって破壊する。一つ二つと。それは何となく気が晴れる行為だ。

「そこまでだ」

 現れたのは四郎さまだった。そしてこちらを見て何とも言えない顔をする。

「どうしているんだ」

「通りすがりです」

 嘘だと四郎さまがいうことはなかった。背後にそれがいたからだ。

「何だ」

 飛び下がった後を薙いだのは黒い触手。私が切り落とした紙から染み出した呪詛が固まっていた。

「お前か」

 四郎さまは触手を叩き落とした。半ば実体のないそれを見ながら四郎さまは目を細めた。

「四郎さま」

 飛び込みながら四郎さまに身を預ける。そのまま人殻を捨てて手甲となって身につく。

「受けろ」

 四郎さまは叫んだ。同時に触手に向かい放った。魔力が構造を破壊した。どこか遠くで壊れる音がした。呪詛の塊を過程を経ずに力づくで返したのだ。返された方が恐らく大きなダメージを受けているだろう。 

 離れながら人殻をまとうと、四郎さまは困った顔で見ている。何か顔を見ているのが照れ臭くなり立ち去ろうとすると

「待って。何か勘違いしているかもしれないが、今日は仕事だ」

「そうですか。分かりました」

「ちょっと何もめてんの」

 声をかけてきたのは先程一緒に踊っていた人間だ。手には血を吐いている男をひきずっている。それが呪詛を放ったものであるのが分かった。

「いじめてるの。爺ちゃんに言われたでしょ。女の子は大切にって」

「いじめるわけあるか。こいつは姉の双葉、こっちは」

「はじめまして。甕星ともうします」

 私は控えめに頭を下げた。

「この娘か、珍しくずっと側にいるっていう娘は。雹くんとばかりいるからそういう趣味かと思ってた」

「アホか」

 そういうと四郎さまは私の手を引っ張った。

「もうこんなのこりごりだぞ。ふう姉ちゃんが弄んだ男に巻き添えをくらって、怒れれるのいやなんだからな」

「はいはい。」

 私は怒ってなんかいないのに。
posted by 九十九屋さんた at 08:37| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恋愛10選 03.君を助けなきゃ

「甕星」

 心配しているのが感じられた。

 学校帰り不意に起こった戦闘。数は三人で中には銃を持つものもいる。今は私を心配している時ではないのに。そんな怒りを覚えた。

 銃を何発か受けたところで問題はない。この姿は魔力で、人殻、人間の姿をまとっているに過ぎない。傷もつけば血も出るかそれは錯覚だ。しかし四郎さまはそうではない。人間だ。銃はたやすく人の命を奪う。

 私は四郎さまの前に立った。四郎さまが何と言おうが私はこうするためにここにいる。

「さらばだ『堕天使の涙』」

 相手は私の正体を知っている。銃弾が放たれた。反応が遅れた。まともに受けたそれは私の体はそぎとっていった。

 私は恐怖した。銃は一見100年以上前の拳銃に似ている。だが、その表面に描かれた紋章は、魔術によるものだ。その銃がただの品物でないのを示している。その素材は金。錬金術の物質的な到達点である黄金の破魔の銃。私の持つ魔力を強制的に物質化することで私を損なったのだ。

「悪魔よ使者よ。打ち砕かれよ」

 狙いは四郎さまではなく私だったのだ。

「あの方の望みを邪魔する要素は全て取り除く」

 銃が構えられた。響き渡る銃声。

 四郎さまの右手が男の手を跳ね上げ、銃弾は空に向かい放たれた。残った右手の掌が男のこめかみをとらえると男はそのまま倒れる。

「貴様」

 脇から飛び込んできた男の蹴りが四郎さまに向かう。蹴りを交わさず左拳で叩き落す。足を折られたのか男は叫びを上げて倒れる。

 研ぎ澄まされた動きだった。それは私の思っていた四郎さまとまったく違った。

「なるほどなるほど。その魔女をかばうのなら、最初から手加減などせねばよかったわ」

 男が変わる。ゆっくりと背中に見える光が巻き上がり、大きな翼と化した。空から男だけに降りる光が男を照らし出す。体つきは二廻りは大きくなった。

「なんだお前は?」

「御使い」

 それでも四郎さまは殴りかかった。だが、拳は触れることはもない。御使いとはいわゆる天使だ。人の勝てる相手ではない。

 弾かれて飛ばされる。地面に立って受身をとったところに御使いが仕掛ける。四郎さまの体は宙高く飛ばされ、地面に叩きつけられた。

「四郎さま。あなたはどうしてそうなんですか」

 四郎さまの手をとった。

「まだ、戦いますか?」

「ああ。君を守らないと」

「それは私の役目です」

 人間の姿である人殻を解除する。体が消えて、武器としての姿を見せていた。私の本当の姿は武具というイメージだ。主人のもっともふさわしい武器と化して主人を守る。今の私は手甲と化して四郎さまの手にはまっている。

「これは」

「四郎さまが望んだのは守る力でしょ」

「そうだな」

 四郎さまは立ち上がった。四郎さまの体は私の発する魔力を注入され今までにない力を持っているはずだ。けれども、初めての装着。受けても一撃が限度のはずだ。

 四郎さまは飛び込んだ。御使いの胸に拳が触れる。

「愚かしいな」

 効かないように思えた。だが、それは一瞬だ。四郎さまの拳技は衝撃による内部からの破壊だ。その技に私の魔力を加える。御使いの体が大きく震えたと思うと、内側から爆ぜていった。破壊していくのはあくまで御使いとしての構造。それが破壊され残ったのは先程の男だ。

「ばかな」

 人殻をまとい、人の姿になると四郎さまの背後に立つ。

「もう甕星には手を出すな」

 四郎さまはそれだけいうと大きくふらついた。その体を支えながら、四郎さまの所に来て初めて悪くないように思えた。
posted by 九十九屋さんた at 08:35| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

恋愛10選 01.初めて目のあった瞬間に

キルシュ http://www.geocities.jp/ruckwartsgang/



 管理人の挑戦状 恋愛10選 をつかわせて貰いました。





 久々に店にたどり着いた客は制服姿の二人組だった。

 その格好は店、魔具を扱うこの店には不釣合いなものだ。魔具は名のように魔を宿した武器だ。ここにきたものは総じて強い意志を持っていた。いや、その意思がなければ魔具に心を食われ、その魔具の傀儡となる。

 この二人はどうなのだろう。

 学生服姿の方はどこか人形めいた雰囲気を持っていて、強さがまなざしに出ている。体つきは小柄な方で、同じ年代の女性よりも細いかもしれない。こちらはここにこれても不思議はないように思えた。

 ブレザーを着たほうががっしりとした割合背の高い。こちらは強くない。瞬間にそう思った。付き合わされたような雰囲気がある。だから、どこか他人事で、こちらを見る目には好奇心がある。

 その視線を受けながら仕掛けた。手刀は簡単に肩に入っている。直撃だ。反応すらできなかった。思った通り弱い。そう思って離れようとすると手を掴まれた。捕らえるとかそういうのではなく本当に優しく。

 疑問が頭を駆け巡った。篭絡するためか、媚びているのか、それとも何かの手なのだろうか。ただの好色か。

 確かめようと目を見ると、何の害意もない。

「女の子は乱暴にしないほうがいい」

 そう聞く顔は本当に自然で何の気負いもない。

「また、四郎さんの説教が始まったよ。すぐ他人に理想を押し付けるんだから」

「女の子は大切にするって言うのがじいちゃんの遺言なんだ」

「はいはい。ねえ、君、店主はいるかな。この天見四郎さんの為の武器が欲しいんだけど」

「はい」

 奥に入って主人を呼ぼうとしたが、手を離してくれない。強く引っ張った。

「ああ、ごめん」 

 

 主人は見立をする目で天見四郎を見ている。あぐねているのだろう。ここにこれたのは雹と呼ばれた同行者の力のせいで彼のものではないのはわかっているのだろう。

「分かりました。お好きな武器をどうぞ。この部屋にあるもので武器になるものならかまいませんよ」

 天見四郎はそれなりものらしい。

「この部屋にあるものなら構いません」

 天見四郎はこちらを見た。

「彼女でもですか」

 主人は嬉しそうに笑った。

「ああ、これが武器であるのが分かるのでしたら、十分ですね」

 そう私は武器だ。今はワンピースをつけて、エプロンやリボンをつけて人の姿をとっているが、これは仮初に姿に過ぎない。

「名を与えてください。そうすればこれはあなたのものです」

「武器って彼女が?」

「ええそうです」

 初めて感じた感情はきっと殺意だった。

 それは錯覚だ。武器には意思はない。名をつけられればその瞬間から私は天見四郎の道具となる。天見四郎は私を見ながらいった。

「甕星、天津甕星」
posted by 九十九屋さんた at 07:44| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする