2006年11月17日

ベルゼバブ

SS 悪霊の頭

 教会の中にいるのは一人の若い神父と年老いた司祭であった。

 二人の顔には隠し切れない疲れの色が見えていた。

「本気ですか司祭?」

 その問いに司祭は頷いた。

「ベルゼバブの力を借りるなど」

 悪魔払いの為に来たこの教会でかの「蝿の王」の名を聞く事があるとは思わなかったわたしは思わず激しい声で言った。

「その通りだ」

「悪魔を祓うために悪魔の力を使うなど間違っています。聖書にもあるではないですか、主が悪魔どもを放逐するためにラビが、ベルゼバブの名を使うことを咎めたと」

「その通りだ。我々の教えが世に遍く広がるまで、ベルゼバブこそが魔神たちの王だった。今回のように神が目を背けていらっしゃるのなら、ベルゼバブを呼び寄せるしか手はない」

「それは神を否定することになるのでは。悪霊を払うのに悪霊の力を借りるのはただの内輪もめだと主ももうされています」

「私は神学上の是非よりも、一人の存在を救いたいのだ。彼女の苦しみを見た神父なら分かるだろ」



〜蝿の王〜 [由来]

 ベルゼバブはヘブライ語ではバアル・ゼブブと言われます。これは『蝿の王』という意味で、蔑称です。本来はバアル・ゼブル。古代カナン人の神の名前であり、ヘブライ語で『高い館の主』の意味を持っています。しかしその意味ソロモン王を連想させることから、蔑称であるバアル・ゼブブの方に変えられました。他にもさまざまな蔑称があるでしょうにどうして蝿の王という言葉が選ばれたかというと、ベルゼバブを祭っているエクロンの神官が蝿で占いをしたからといいます。同時にハエは旧約聖書中にも災厄の象徴として記されています。

 また、バアルは主人や王という意味なので古代の神々でもアスタロトなど女神の伴侶となる神には多くつけられる名でもあります。

 そんなものがどうして悪魔になったのかといえば、キリスト教が発達し、他の宗教の神々が悪役になってしまったせいです。魔神と呼ばれるバールもまた同じように悪魔になってしまったものですね、そういう意味では零落した神が妖怪になった日本ともにているかも知れません。

 

〜現在封印中〜 [余談]

 実はベルゼバブは現在、地獄に幽閉中なのです。聖書の中でキリストによって何度となく邪魔をされたベルゼバブは、ユダを利用してキリストを処刑させることに成功しました。そして魂になったキリストを捕らえようとしました。

 そして死んだはずの万軍の主(キリストの魂)ですが、多くの天使を従え、地獄に降りてきました。ベルゼバブをはじめ、悪霊たちはそれに怯え、巨大な青銅の扉をしめ、万軍の主が入ってこれないようにしました。ところがその青銅の扉を破壊し、入ってきました。逃げようとしたベルゼバブは捕らえられ、万軍の主の第二の来臨(すなわち最後の審判)まで地獄に閉じ込めておくように命じます。

 しかし、ベルゼバブはその枷をあっさり解き、地上に出てきているようで、17世紀はフランスで悪魔払いを受けたり、サタンにかわって一時期地獄の君主にもついたといいます。
posted by 九十九屋さんた at 22:03| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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