2005年05月05日

メフィストフェレス

SS もっとも早きもの

「メフィスト」

 闇の中に若き魔術師の言葉が響くと、もう目の前には一人の男が立っていた。

 シルクハットに燕尾服、黒いマント。戯画のように思えるその姿をした男は人ではない。

 彼の名はメフィスト・フェレス。空飛ぶ魔神と言われ、天の兆しを読み取ることから未来の予知に長ける悪魔だ。

「まったく君の早さには恐れ入るね」

 メフィストは笑った。

「俺は人の考える速さで動くからね。これは俺があんたの空想の産物って言ってるわけじゃないのをくれぐれもお間違いなく」

「ああ、分かっている」

 メフィストはなれなれしく魔術師に触れた。

「でもあんたたち人間はもっと早いものを持っているよ。俺たち悪魔だってとても及ばない」

「それは何だい?」

「何だと思う?」

「天使ではないな。それは恐らく人に関わるものだろう」

「すばらしい。よく見抜いたものだ。善から悪、悪から善に替わる早ささ。とても俺たちには真似できない。意外と俺たちは主義主張に律儀なんだよ」

「我々は土から作られているからね。土はそこにあるもので姿を変える。もともとが光の君らとは違うよ」

 

〜愛すべからず光〜 [由来]

 メフィスト・フェレスの名前の由来は、ギリシア語で『愛すべからず光』とも、『光を愛さぬもの』とも捕えることができる悪魔らしい名前です。彼はもともと聖書に登場する悪魔ではなく、『ヨハネス・ファウストス博士の物語』を皮切りに、ドイツの大衆演劇や物語、オペラなどに登場する存在などです。彼はファフスト伝説と呼ばれるものには必ず共に登場したのです。日本でいうと義経の芝居をした時に必ず弁慶がついてくるようなものですね。

 さてそんなメフィストですが、こんな姿が伝わっています。姿は直立したドラゴン、あるいはグリフォンに似るとされ、大きなとんがった嘴と黒い翼。そしてその身体は黒い毛に覆われているといいます。

 しかし、馴染みがあるのはやはり人間になっている姿でしょう。よく手入れされた顎鬚、とんがった鋭角的な印象を持った顔。頭の上には一対の角を生やし、脚はロバのものになっているといいます。サリーちゃんのパパみたいな感じですよね。



〜契約者〜 [余談]

 メフィストとの契約は他の悪魔と違い大げさな魔方陣は必要ありません。なぜならメフィストは自ら選ぶからです。彼はまず最初に人の心にささやきを発します。それは悪徳の誘いであり、心の中に響くものです。誘惑に乗った時初めてその姿を現すのです。

 メフィストはほとんど万能といっていい力を契約した人間に与えます。若返りや、普通の人間では手にいれらないものを与えたり、死者を生き返らせたり。しかし契約したものの末路は悲惨です。契約の期間が終わると、契約していたものは全身を引き裂かれ血の海で息絶えるといいます。そう彼はその穏やかな物腰ながら地獄の大公の一人なのです。時折、契約の間に改心し、メフィストの手から逃れられる人間も居ます。

 どちらにせよメフィストは満ち足りる事はありません。彼は地獄に落ちた事を悔やんでおり、いつか審判の日に全ての罪が許されるのを待っているのです。

 だからこそ彼は神の敵でありながら、その道具のようになり、人間を試すのかもしれません。
posted by 九十九屋さんた at 08:36| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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