2005年05月05日

ベリアル

SS 黒き舌

「すばらしい演説でした」

「話を聞いてこんなに感動したのは初めてです」

 講演が終わると近づいていったものは口々にこういった。

 そう、確かにその男の弁舌はすばらしいものだった。

 彼の口にかかれば、黒きものは白く、邪悪なものは善良にすらなった。だから聞いたものは等しく心を奪われる。

 だが、人々よ用心するがよい。彼の声に、理屈にどこか虚偽の、言いくるめの気配を感じないだろうか?

 今、わたしの言葉を聞き、考えなおしたものは賢明である。

 彼の、ベリアルの弁舌に惑わされえてはいけない。そう彼の言葉に耳を傾け、心を動かすこと。それは同時に一つの事実を示しているのだ。

 そう彼の言葉に従うことは支配を受けることを示しているのだ。彼は最後の審判の日に全ての地獄に落とされる不正のものすべてに対する支配権を持っているのだから。





〜この世の君〜[由来]

 ベリアルの名には様様な意味があります。『無価値』、『邪悪』、『無益』、そうした名前を与えられたベリアルはどこから来たのでしょうか?

 ベリアルはルシフェルの直後に創造されたとされ、中世においても強力な悪魔とされていました。美しさは天使の頃と変わらず物腰は優雅で気品に溢れたといいます。しかしこれほど放埓で、悪徳そのものの魅力にとりつかれたものはないといいます。ソドムを始め、ベリアルを信仰するものは多くとも、その祭壇を作る勇気のあるものはなかったといいます。

 そのようなポジションを与えられた理由の一つが新約聖書にあります。コリント人への第二の手紙の6−15に『キリストとベリアルに何の調和があるでしょう』と、救い主に対抗する存在としてその名前は書かれています。そのためベリアルはサタンの一面と考えられました。この世の君と呼ばれるのもその現れでしょう。



  

〜ソドムの魂〜[余談]

 外典の中には、ベリアルがユダヤのマナセ王に取り付き、父親が改宗していたユダヤ教を捨てさせた話があります。その結果偶像崇拝が蘇り、都は荒廃しました。宮殿は荒廃し、人倫は乱れたといいます。

 ベリアルの政策がもっともうまくいったのはソドムの町です。死海のほとりにあったこの町では悪徳がはこびリ、男色や、獣姦がはやったといいます。このためソドムの町は火と硫黄で滅ぼされたといいます。

 10世紀以降、法律が整備されてくるとベリアルがキリストに対し、訴訟を起こした物語が伝わってきます。その告訴の理由はキリストが地獄の権利を侵犯したというものです。これは神の領域は天界であり、この世と地獄は悪魔のものであるという話が前提にあります。この世は悪魔の領域であるのに、キリスト教に改心させたキリストはけしからというわけです。さて、裁判の結果ですが、キリストは無罪。しかしベリアルはただでは負けず、最後の審判の日に地獄に落とされる不正なもの全てに対する支配権を勝ち取ったのです。

 ベリアルに関してもう一つ伝承を。ソロモン王は悪霊であったベリアルとその軍勢52万2280人を瓶の中に閉じ込め、バビロンの井戸の中に沈めたといいます。バビロンの人々は後に、そこに宝があると思い瓶を開けてしまいました。そしてベリアルは開放されました。ベリアルはそれから閉じ込められないように偶像や、人の中に入って閉じ込められないようにしたそうです。なんかパンドラっぽいですね。
posted by 九十九屋さんた at 08:32| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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