2005年05月04日

ヴァンパイア

SS 夜の貴族  

 ロディ・ファーランドは友人のクルジム・オムニ伯に招かれ、夕食を共にしていた。

 広間で行われた夕餉は豪華でロディは舌鼓を打った。

 広間の扉が開いた。一人の見知らぬ男だった。

 時代がかかっているが豪華な衣裳と、そのオムニ伯に似た顔立ちから、一族のものように思われた。

 男はオムニ伯の横の席を陣取り、人々を見た。

 オムニ伯の家のものたちは決して視線を合わせないようにし、あった途端うろたえ、怯えたように思えたが、理由を聞くのも不躾と思い、ロディは黙って奇妙な緊張感ある食事を続けた。

 翌朝、ロディを待っていたのはオムニ伯の死の報せだった。

 寝室から慌てて出たロディは廊下に飾られた肖像画を見て歩みを止めた。

 それは歴代のオムニ伯のものであったがその中に昨夜の男の姿を見る事ができた。

 ハイレム・オムニ。そう、クルジム・オムニ伯の祖々父に当る百年以上前に

存命した男であった。



〜18世紀という時代〜 [由来]

 ドラキュラやカーミラなど有名なヴァンパイアもののキャラクターが生まれたのは19世紀ですが、その前にヴァンパイアという名で吸血鬼という言葉が生まれ、一元化されたのには理由があります。

 18世紀教皇であったベネディクトゥス14世が啓蒙的な立場から多くの吸血鬼の情報を集めました。各地に残る土俗的な信仰や、異端的土壌を封じるために行われたのですが、皮肉なことにそれにより、各地で散逸して、忘れられようとしていた吸血鬼をこの世に呼び覚ましたのです。

 それ以前はどう思われていたかというと東欧地方に古くから広く伝わっていたものです。『死者が葬られる前にその死体を猫がまたぎ、鳥が飛ぶと、その死者は吸血鬼になる』といわれていました。また、犯罪者や悪人、呪術師、涜聖者が死ぬという説もありました。既にその頃から吸血鬼に伝染作用があると思われており、そのために村全体の死体を焼却した話が残されています。

 さてヴァンパイアという言葉自体にはトルコ語の『uber』(魔女)や、セルビア語の『vampir』(飛ばない人)からきています。

 19世紀にはこの言葉が一人歩きして妖艶な美女をヴァンプと呼ぶようになったくらいです。







〜ドラキュラ伯爵〜 [余談]

 吸血鬼の中でもっとも有名なのはドラキュラ伯爵ことブラッド・ドラキュル・バサラブというのは一致した意見と思います。これは1879年ブラム・ストーカーの『吸血鬼』に登場したものです。

 実在の人物であるツェペシ公をモデルとした吸血鬼は、貴族、動物を操る、鏡にうつらない、コウモリに転じるなど、ヴァンピールが吸血鬼を倒すものであるなど、現在でもよく知られている特徴を与えました。

 その中でドラキュルの正体は語られていません。彼の一族には同じように血を好む性癖のものが多く、不老である彼らは一族に現れるものが同じだとしてもなんら不思議は無いからです。

 作者の方もそれがわかっていたらしく話の最後でしっかりした処置をとらずに筆を置いています。

 もしかしたらドラキュラはなおそこにいるのかもしれません。

 吸血鬼を描いた作品は多いですが、最近ではアニメにもなった『月姫』の吸血姫アルクェイド・ブリュンスタッドが有名ですね。
posted by 九十九屋さんた at 09:43| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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