2005年05月04日

獣人

SS 魂の咆哮  

 そこは教会だった。

「そこまで真相がわかっているのなら、もう呵責はないはずだ。領主を牙にかけた人狼はわたしだ」

 神父の言葉を聞きながらもエルフの冒険者ニアブ・アークレイブは攻撃できないでいた。

 孤児を救うために私費を投げ打ち、清廉だった神父。

 あの民衆から厭われていた領主が襲われた事に人々は喝采を上げた。

 それでもニアヴは倒さなくてはならなかった。

「ごめんなさい。でも、逃がせば、軍はこの森を焼き討ちする。わたしはそれを許す事はできない」

 ニアヴはルーンを唱えた。

「謝る事は無いよ、ニアヴ。こうなるのは分かっていた事だ。早くわたしを殺しなさい。月が出る前にね。月は望まぬ不死を私に与える」

「せめて安らかに」

 風の精霊がニアヴの声に答え、安らかな死の風を放った。

 



〜シャーマニズム〜[由来]

 人と獣の力を持った一族は世界中と言っていいくらい各地の伝説で語られるものです。人熊、狼男、豹男、人虎、獅子人など、例を上げるとキリがないくらいです。では、それがどのようにして生まれたかというのを考えると狩猟時代の記憶に行き着きます。

 狩猟時代、人間は他の獣よりも劣っているように思われました。熊のような膂力も、豹のような早さも、蛇のような毒もありませんでした。そこで人は身体に油や泥を塗ったり、獣の皮を被ったりして動物たちの力を得ようとしたのです。また、そうした生き物を祖霊とし、シャーマンによりそれが降ろされるにいたって自分たちに与えられる力を信じました。そんな記憶が獣人の一族を誕生させたように思えます。

 

〜獣人の条件〜 [余談]

 獣人の代表であるワーウルフの姿は完全に狼に変わってしまうものの、毛が長くなる程度のものの二種類がいますが共に夜になると理性を失い暴れるものとされています。

 人狼になる理由も主に3つがあります。生まれと呪いです。

 羊膜をつけて生まれた子供や、七番目の息子は狼になるといいます。

もう1つの何らかの理由で呪いをかけられた『美女と野獣』のようなものです。

最後は噛まれたものや殺されたものが伝染するというものです。これを軸に考えた

場合、狼つきを始めとした現象は狂犬病のためであるという説を立てることができますね。

 今回獣人というものを考えるとその種類の多さに驚かされます。『西遊記』に出てくる妖怪の数々は、天上から逃げ出した聖獣が人に化けた事も多く、その大半が獣人といえます。

 日本で獣人というとニュアンスが違いますが、葛の葉などが上げられます。彼女は安部清明の母であり、正体は白狐であったと伝えられています。

 どうも獣は邪悪であるという認識があります。その反面、獣の子とされた安部晴明や、卵から生まれた中國の王や、オオカミに育てられたローマの建国者ロムロスの事を考えると、人は邪悪と同時に先祖が畏怖した力を見ていたのかもしれません。

 中國の獣人の中で日本で有名なのは『山月記』ですね。これは山中で会った虎が旧友の変わった姿という物語です。厳密には獣人と違うのですが、人と獣の間にたつものの悲哀が描かれた佳品です。
posted by 九十九屋さんた at 09:35| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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