2005年05月04日

グリフォン

SS 像の秘密

「どうして教会にグリフォンの像があるの?」

 日曜の礼拝に来ていた幼児に聞かれシスターはにこやかにほほえみながら頷いた。

「聞いてきてあげるわ」

 シスターは小走りになると中庭に向かった。それはシスター自身にも疑問だったからだ。

 中庭に行くと探検家でありグリフォンの事も語られている東方旅行記の作者であるサー・ジョン・マンデヴィルが噴水に描かれたペリカンのレリーフを見ている。

「どうしましたシスター・セシル。息を切らせて」

「ちょっとお聞きしたいことがあって。どうしてグリフォンの像が教会にあるのかと礼拝に来ていた子供に」

「子供の疑問に答えるのも大人の義務ですからね。お教えしましょう。このペリカンの寓話をご存知ですか?」

「蛇に雛鳥を殺されたペリカンが自分の胸を裂いて子供を生き返らせた話ですね。それが自分のわき腹をやりで刺されたキリストの象徴であると」

「そう例えばそこのパンサーなどもそうなのですが、この教会にあるのはキリストの象徴であるものなのです」

「ではグリフォンも?」

「そう『キリストは君臨し、偉大な力を持つ故に獅子であり、復活の後天に登るので鷲である』。即ちグリフォンの事である」

「子供に教えてあげてきますね」

 シスター・セシルが走り去った後、マンデヴィルは呟いた。

「それが今回の鍵か」



    

〜鉤爪の主〜[由来]

 グリフォンはキマイラの派生ともいわれていますが、その美しいデザインから独自の地位を築いています。もともとギリシア語ではgrypsで、ギリシア語の曲がったという意味のgrypsに関連するといわれています。

 姿としては単純に上半身が鷲、下半身がライオンのものもありますが、紋章として見れるものは、胴がライオンで、上半身は鷲、馬の耳、そして蛇の尻尾のデザインは幻想動物の中でも美しいものとされています。体色はいろいろで青単色である場合と、黄金の翼と、赤い胸、あとは白というものもあります。

 その性質は獰猛で八頭の獅子よりも大きく、百羽の鷲よりも逞しかったといいます。二頭の牛を一瞬で持ち去るほどの膂力を持ち脅威の生き物と言えるでしょう。

 グリフォンはギリシア原産の由緒正しいモンスターの1つです。酒の神であるバッコスの飼っていた生き物とも言われ、アポロンの聖獣とも言われました。また北方に棲む彼らが金脈の側に住む性質から一つ目のアリマスポイ人と黄金を巡り争っていたといいます。

 ただ、これには異説があってインド発生説もあります。その理由となるのがグリフォンの頭です。アジア系はとさかで、ギリシア系はたてがみといいます。

 サー・ジョン・マンデヴィルの活躍した14世紀ではキリストの象徴とされたのは、聖書のエゼキエル書にある4人の天使の一人を示した記述『四つの者鷲の顔あり。』と、黙示録『第四の活物は飛ぶ鷲の如し。』に起因するようです。そして陸の王者であるライオンと、空の王者であるワシの混合は、陸=世俗、

空=聖となり、聖俗どちらにも力を及ぼせる教会の象徴ともなりました。、

 現在、なぜ教会で見かけないかというと、後にサタンの創造した生き物とされたからです。そうなってしまうと評価は変わり、魂を盗み取るサタンとなりました。

 多くのモンスターにいえることなのですが、権力の判じ方一つで聖は邪に、魔は神に容易く転じるようです。





〜禁断の子供〜[余談]

 グリフォンと馬の混血はヒポグリフというモンスターとなります。『Jungentur jam grypes equis』これはグリュプスに馬をかけあわせるという意味で、不可能という意味の諺です。その理由はグリフォンは馬肉を好むためにありえない話なのです。

 16世紀の初め、『狂えるオルランド』を書いたルドヴィコ・アリオストがこの諺をもとにヒポグリフを創造としたといいます。なぜヒポグリフかというとラテン語で馬はHippo、グリフォンはGryphisの二つをあわせたからです。

 その姿はともうしますと鷲の頭に、鍵爪のある足先、羽毛のある翼を除けば他の部分は馬といいます。

 アラビアン・ナイトに出てくるヒポグリフは黒いペガサスという感じです。イギリスでは昼間は普通の姿ですが、日が落ちると背中から翼が生え、顔は蛇のように化し、足からは大鎌のような鍵爪が伸びたといいます。うまく仕込めば最高の戦馬になったといいます。



グリフォンに関してはtoroiaさんのブログでおもしろいのでどうぞ。

幻想動物の事典制作メモ&NHK
posted by 九十九屋さんた at 09:03| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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