2005年05月04日

コカトリス バジリスク

SS 砂漠の起源

 少女が何かの卵を拾ったのは鳥小屋での事だった。そんな言い方になるのも少女は目がほとんど見えないからだ。

 生まれた時から弱かった目は癒される事無く時を過ごし、今ではものの形の僅かに捕らえるに過ぎなかった。

 卵が孵った。

 孵ったものが何であるのか少女には分からなかった。部屋に閉じこもりがちな少女にとって卵から孵ったものはなぐさめになり、それが分かるのかその生き物は少女に懐いたが不思議と他のものの前に姿を見せることはなかった。

 ある日の事だ。少女は生き物に向かい話し掛けた。

「街に魔法使いがいるの。もしかしたら目が見えるようになるかもしれない」

 少女は嬉しそうに語るので、生き物も嬉しくなったかのか飛び回った。

 そして数日が過ぎた。

 少女は久しぶりに見る豊かな森に心躍らせながら自分の家に戻ると真っ先に部屋に戻った。

「見てあなたの姿が見えるようになったの」

 ベットの脇の方に鳥の脚が見える。それが鳥だと知ると少女はふざけるよう

に鳥の囀を真似た。

 生き物が姿を現した。

 それが少女が生きものを見た最後の事だった。

                 ◇

「それがコカトリスがこの森で見られた最初の事だった」

 大魔道師である男の言葉にショートカットの少女ヒナギ・アサラはえくぼを見せて笑った。

「先生、ここ砂漠だよ」

「そう今はね」

 大魔道師は見た。地平線いっぱいに広がる広大な砂漠を。

 かつてここが地母の森と言われた広大な森林であったのを知るものはもう少ない。



       



〜蛇と鳥の最中〜[由来]

 コカトリスはバジリスクと混同されがちですが、もともと同じものなのです。バジリスクはギリシア語でそれを英語読みにしたのがコカトリスといいます。コカトリスの名は古いものので、現在聖書でマムシと訳されているところに場所によっては、コカトリスという言葉が入ったいた時期もありました。

 この二種の姿は様様に変ってきました。最初はその語源である小さな王(Basiliskos)の通り、王冠を頂いた蛇であったといいます。中世以降鶏冠と黄色の羽毛、4本の脚を得て今と同じようなデザインに落ち着きました。このような事からコカトリスが誕生するのはオスの鶏の産んだ卵が蛇によって温められて生まれると言われるようにもなりました。

 ただ、姿は変っても伝わっているものもあります。眼差しと毒です。眼差しはゲームで言うところ石化能力を持ち、一目で見たものに死をもたらし、体中からは毒を発したといいます。どれくらいかというと飛ぶ鳥は落ち、口をつけた川は毒の川になったと言います。コカトリスが砂漠に出るのは自分の住んでいる周りを砂漠にするからではないでしょうか。





〜対立の存在〜[余談]

 コカトリスとバジリスクはその強力な死の力を持つ反面、多くの弱点を持っていました。まずその死の視線に対抗するには盾で視線を合わせないように槍で刺すこと。しかし、槍を毒が伝わってくるので殺した人間もまた死ぬといいます。しかし心配する事はありません。 天敵がいくつか存在しています。そのうちの一つがイタチです。

 『イタチはヘビと闘う時は、前もってヘンルーダを食べる。ヘンルーダの臭いはヘビにとっては有害だからである。』と『動物誌』にあります。ヘンルーダは日本にも入ってきている薬草です。魔除けや興奮剤、虫よけとなりましたが、コカトリスに対しては致命的な毒となります。それを食べているイタチはコカトリスの天敵となるのです。シンボル上の問題で実際食べるわけではありませんが。

 多くの神話の中で見ることができる鱗の一族と翼の一族の葛藤。コカトリスやバジリスクは数少ないその二つの性質を持ったものです。同じような存在である応竜もまた神殺しでありました。両者の融合は不詳なものかもしれません。 
posted by 九十九屋さんた at 08:48| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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