2005年05月01日

リヴァイアサン

SS 救世主の食事』

 ニスロクはため息をついた。

 ニスロクは最高のシェフであり、魔界の王宮である万魔殿で総料理長を務めていた。

 さて今週ついに、アダムとイヴの昔から、もといそれ以前からあった天界と魔界の戦争は終わりを告げた。

 魔界は敗戦国となりニスロクは職を失う事になった。

 幸い芸は身を助けるという言葉通りあっという間に再就職できた。それはメシアの為の食事を作るということであった。

 メシアは復活したばかりの人間ということで消化のよいものと思っていた。

 ところが用意された食材は鱗のある白身の魚を思わせるものだった。異様に巨大な魚の一部らしい食材を裁きながら、ニスロクはその鱗をどこかで見た気がしていた。

 まず皮を剥いで、塩を振る。塩は当然、死海の塩だ。味のまろみとえぐみは天地の間でもこれだけの塩はそうない。

 丹念にというか、意識の切り替えは完全だった。ニスロクは誰に出すかも忘れて精力を尽くした。

 好評のうち食事会は終わりを告げた。やはり卓越した手腕は再就職にも有利なようだ。

 厨房の後片付けをしていて、ニスロクはその魚をどこで見た事を思い出した。それは客であった。万魔殿に来た彼に給仕したものであった。

「リヴァイアサン」

 そうかつて地獄の海軍大臣であった彼はまさに身を持って贖罪されたのであった。

 

〜神の創造物〜[由来]

 様々なゲームで姿を見ると蛇、またその名もとぐろをまいたものと呼ばれるそのリヴァイアサンですが、聖書中のイメージでは、むしろワニに似ています。当時、聖書を編纂したユダヤ人にとってエジプトが脅威であった事があげられます。もともとナイルにはワニが多く、それが象徴になったのではないかといわれています。

 強大な存在としてのリヴァイアサンは、ティアマットを始めとする巨竜のイメージが反映されたようです。特にその影響を与えたといわれているのが、カナン神話の死の神モトの部下でありロタンです。地上や海を荒らし、太陽や月を食い漁った非常に巨大な竜であったといいます。それがユダヤ教に吸収されたのです。

 ユダヤの民話においてリヴァイアサンは天地創造の五日目に雌雄で作られた存在と言われています。それは巨大で、雄には全ての大陸が乗せられる程だったといいます。創造した神自身がこれが雌雄で存在していてはいずれ世界が彼らのものになると判断し、雌の頭を打ち壊し、いずれ来る救世主の為に塩漬け肉にしたといいます。

 さて雄の方はといいますと、世界の支え意の一角となっているます。この世の終わりの日、その背中から大陸を押しのけ、ベヒーモスと闘った挙句、倒されてしまうといいます。そして傷ついたベヒーモスは天使に倒され、最終的には食料にされてしまうと・・・むごいですね。

 違う説によると陸の巨獣であるベヒーモスは雄として創造され、リヴァイアサンは雌として創造されたといいます。



 

〜地獄の立場〜 [余談]

 地獄においてリも名前を残しています。サタンが地獄に落とされた時、リヴァイアサンも反乱を起こしたのかもしれません。 中世悪魔学における七つの大罪の一つ嫉妬を司る大魔王となっております。位階は大公で、海軍大臣を務めています。

 獣というか、動物っぽいレヴィアタンが強力に描かれているのは、一神教の成立以前に鍵があるようです。『レヴィアタンは聖書の中におののきを知らぬものとして作られている。』などの記述が見え、神々も怖れるという記述があります。それを創造し、また殺すことができた唯一神を賛美する語句が連ねられます。レヴィアタンにそれだけの力があったのです。レヴィアタンを始め、蛇は多神教の時代、強い存在の一つでした。聖書中に登場する祭祀を司る一族であるレビ人の、レビはレヴィアタンからきているといわれます。つまりレヴィアタンは唯一神の力の一端を担うものであったのです。その記憶があったが故にレヴィアタンは強力な存在となったのでしょう。

 もっとも世の中でたった一人しかいない対を殺されれば、神に反乱して当然と思うのですがどうでしょうか。
posted by 九十九屋さんた at 09:32| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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