2005年05月01日

メリュジーヌ

SS リュジニンの奇譚

 リュジニンの街を訪れる、なおかつその城に滞在できたものは幸福である。街は人が作ったものとは思えないくらい精巧で、大きな修道院もある。その修道院の側にある白亜の城は高い尖塔を持ち、優雅に曲線を描く城壁を持ち、人が思い描く童話の城そのものだからだ。

 城を訪れ、客人として過ごすあなたは、安らかな寝台の中で、ある夜聞くかもしれない。女のものである甲高く鋭い泣き声を。

 パンシー(泣き妖精)と思うかもしれないがその声にじっと耳を傾けて欲しい。そこには何らかの警告が含まれていないだろうか?。

 そして窓を開け外を見るのだ。美しい乙女が宙に浮かぶ姿を見ることは無かっただろうか。

 もし見たのなら一言城主に伝えることだ。そして告げたのならばすぐに城から去ることだ。そう、その美しい乙女こそこの嬢主の先祖であり、この街の名前の由来ともなったメリュジーヌが子孫に警告を与えに来ている姿なのだから。

 メリュジーヌが出現して数日のうちに城主は亡くなるか、城が敵により奪われ城主が追われる証という。



 

〜リュジニンの母〜[由来]

 エメリヒ・ポワチエ伯爵とその養子ライモンダンはある日狩りをしていました。二人の前の巨大な猪が現れ襲い掛かってきました。ライモンダンは猪を殺しましたがその最中に伯爵の事も刺して殺してしまったのです。

 衝撃のあまり彷徨うライモンダンは『渇きの泉』に辿り着きました。そこには3人の乙女がいました。乙女は自分たちの誰かと結婚し、結婚後は土曜日に自由にしてくれるなら助けてあげることを約束します。ライモンダンはその一人メリュジ−ヌと結婚し、条件を飲みました。

 ライモンダンはメリュジ−ヌの巧みな弁舌により罪を問われることなく伯爵の跡取として広大な領土を治めることになります。

 ライモンダンとメリュジーヌの間には10人あまりの子供が生まれます。兄弟同士殺しあうものや、目が三つあるものなどさまざまな、狼のように毛深い子供など。しかし、中には立派な騎士となる子供もありました。そしてメリュジーヌの不思議な力によって、リュジニンの街が築かれ、幸せな日々を送ることができたのです。

 長い間の平和な生活が続きます。年をとらない美しい妻。街は富み、子供たちも平和に暮らしています。その中でライモンダンは噂を聞きます。土曜日ごとにメリュジーヌは愛人に会いに行っている、妖怪を集めているなどです。

 ライモンダンはメリュジーヌの後をつけます。そして見てしまうのです。メリュジーヌが湯浴みする姿を。上こそ美しい妻のままでしたが、下半身は巨大な蛇であるのを。メリュジーヌはライモンダンに別れを告げ姿を消します。ライモンダンは悲哀のうちに生涯を終えます。

 その後、メリュジーヌは自分の子孫たちに不幸が訪れそうになると姿を現し、

泣声をあげるようになったのです。



 

〜半人のドラゴンたち〜 [余談]

 半人のドラゴンといえば、今回のメリジューヌは始め、エキドナ、ナーガ、ラミア、ジョカといったものが思い出されます。これらを見た時、特徴を見出すことができます。それは上半身が女性であることです。

 ティアマトーでも取り上げましたが、ドラゴンはもともと大地母神の要素を持っています。そして蛇と人を組合した半人のドラゴンを生み出した原因を考えた時、髪に行き当たります。長い髪は女性のシンボルといえます。髪は身体のほかの器官と違ってなかなか土に還らずいつまでも姿をとどめ黒々としています。それは脱皮をすることで、永遠の寿命を持つといわれた蛇を連想したのかもしれません。そして蛇から連想されたこうしたものたちは女性の上半身を持つ事になったのです。そうした意味ではメドゥーサもまたその系譜にあるものなのかもしれません。
posted by 九十九屋さんた at 09:31| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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