2005年05月01日

ウロボロス

SS 無限の力  

「あなたはついにウロボロスの秘密を手に入れた」

 ニアヴの声は震えていた。目の前にはかつて愛し、そして今でも愛する男テイ・クローナがいるというのに。

 テイは穏やかな目をニアヴに向けた。

 テイはウロボロスの神秘を手にした。それは神も魔も全てをひれ伏せさせる無限の力。

 それがいかなる意味を持つのかニアヴもテイも知っていた。

 無限の力。それは人のための力ではないのだ。

 手にあまる大きな力はたやすく人から理性を奪い獣に落とす。今がその時だった。

 テイは奇妙な虹彩の輝きを見せる目をニアヴに向けた。

 終わりが近いのをニアヴは感じた。

 それが恋する二人の為の終わりなのか、生命の終わりを感じる慄きなのか分からないが。





 

〜無限へ〜[由来]

 もともとウロボロスには『尾をむさぼり食うもの』という意味のギリシア語です。

 ウロボロスの元となった蛇は、サタンの化けた蛇も含め、さまざまなイマジネーションのもととなってきました。それは蛇の不可思議な性質が人の目についたためでしょう。足がないのに歩けることや、脱皮などです。特に脱皮は古い肉体を捨て、新しい肉体をよみがえらすという驚異だと思われたのです。この通り永遠の生命というイメージをもともと蛇は持っていたのです。そして忘れてはならないのがギリシア人の持っていた円環状の世界を取り巻く水のイメージです。さらに自分の尾から始まる蛇のイメージが重なり、不死や無限。そして時間という意味を持ち始めたのです。

 そのイメージは錬金術にも受け継がれ、不死や無限は無論、前記の海のイメージからか世界を象徴するようになりました。そこから始まりから、過程、終わりまでが連想され、それらを制御するものとて『賢者の石』の象徴となっていくのです。





〜救世主〜 [余談]

 ウロボロスはキリストの象徴にもなりました。それは無限や永遠と言ったイメージによるものでしょう。しかし、それを唱えていたグノーシス主義は教会と断絶する蛇のイメージを持っていました。即ち蛇によって初めて人間は知識の実を食べ、知恵に目覚めたからです。蛇は悪魔ではなく、神エホヴァが姿を変えたものと唱えたのです。

 グノーシス主義はギリシアで始まったものですが、その根底にはオルペウス派に伝わるもう一匹の無限蛇の伝説を見ることが出来ます。それがオピオーンです。

 オピオーンは世界の始まりの卵から生まれた最初の生き物で、そこから闇と大地、愛が生まれ世界が始まってしています。オピオーンは人に知識を与えたといいます。グノーシス主義ではこのオピオ−ンこそがエホヴァと同一視された知識を与えた蛇だったのです。

 同じ蛇のイメージが救い主と、その敵対者に与えられているのはおもしろいですね。

 
posted by 九十九屋さんた at 09:29| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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