2005年05月01日

虹蛇

SS 二つの世界にて 

「私は蛇なのだよ」

 その魔法使いのいう事がわたしにはわかりませんでした。第一魔法はあってはならないと教会で教わりました。だからその人も悪い人だと思えたんです。

 魔法使いは笑いました。

「それは目覚めの世界の話だよ」

 わたしにはまるでわかりませんでした。

 その日わたしは夢を見ました。その夢の中でとても巨大な虹を見たのです。虹は大きな身体なのに小さなわたしに気付いてじっと見ています。その目を見てわたしは思い出しました。昼間の魔法使いの顔を。

「魔法使い」

「そうだよ。君も来たのだねこちらに」

 その声はとても嬉しそうでした。

「どうしてこんな小さなわたしに気付いたのですが?」

「ここは夢見る世界。君もまた違う姿をしている」

 そう思って自分の姿を見るとわたしも大きな一匹の虹蛇でした。



〜眠る世界で〜[由来]

 アボリジニの伝説によるとまず広い海だけの夢の世界があったのです。そこで創造神であったマウウは最初に虹蛇でありもっとも古い精霊となるウングドを作り出しました。ウングドはマウウに協力してブーメランを何度も投げました。海面にあたったところからたくさんの泡がたち、その泡が固まって陸地になりました。ウングドは陸地にあがると多くの卵を産みました。それが孵って虹蛇を含め、多くの精霊たちが生まれました。その精霊たちが多くの動物を生み世界は賑やかになっていったのです。

 ウングドはその後、大地を支えるために海底で大きなとぐろをまいています。彼女が時折身体を延ばす時に見えるのが虹だといいます。



〜虹蛇たち〜 [余談]

 残念な事ですが、アボリジニの人々の伝説はあまり残っていません。キリスト教が進入した時に、明快な論理を持っていなかったせいか廃れてしまったのです。虹蛇はその中では割合多くの話が採取している方です。

 虹蛇はアボリジニが各部族で崇拝する蛇の精霊です。虹蛇と言っても色合いはさまざまで各部族ごとに色が違うそうです。彼らは普段は泉の奥底に住み、水や雨を降らし、大地に生気を与えるのです。雨が大量に降る雨季に虹蛇を見るのは乾季に備えて水を集める虹蛇の姿です。

 部族ごとに虹蛇がいるせいで、さまざまな伝承があります。その中であなたがもっとも近づけるのがワムナビという虹蛇です。彼はエアーズロックの地下にいます。彼は目覚めの世界を嫌っていてこの世界に来ることはありませんでした。でもエアーズロックに行けばそこでどうしてアボリジニが感じた虹蛇の感覚を知ることができるでしょう。 

 アボリジニによると世界は「目覚めの世界」と「夢の世界」に分かれており、全てのものはお互いがお互いを夢だと思っているのです。同じ姿の時もありますが、夢の世界では違うものの時も多いといいます。だから、虹になった夢を見たあなたはドリームランドでは虹蛇なのかもしれません。
posted by 九十九屋さんた at 09:28| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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