「本当になってしまったんだね」
その獲物はしぶとかった。私は剣の精。触れたものをすべて切り裂くもの。だが、その獲物は切り裂けない。
多くの御使いたちを私は滅ぼした。それはもう自然なこと。敵は敵だ。
しかし、早さも強さもはるかに劣るそれに対して何もできないとは。なんという腑抜けか。
私は熾天使の瞳から作りだされた最強の存在だ。彼の怨嗟を受けて、あの妬ましいものの作り出した全ての創造物を破壊する。
距離をとった。全力を解放すればこの場も壊れるが、すべては終わる。
「もう見たくない」
獲物はこちらが魔力を高めているのに近づいてくる。まったくばかな獲物だ。
「朱に交じり笑う君を」
魔力の集まった手を握った。獲物の手は傷ついていないわけではなかった。もう腕は裂け血は出ている。どうしてそんなことをするのか。
意味のないあまたの行為が思い出された。
私は何をしているの?
何か悲しくて飛び出して、そうだ私は。目の前それが分かる。四郎さま。
しかしもう遅い。魔力は解放された。
2005年05月01日
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