2005年05月01日

恋愛10選 07.なんでこんなことするの?

 逆らえない。

 四郎さまは主だ。だから望まれた事はしなくてはならない。分かっている。でも、それは耐え切れなかった。

 暴れた。そうはいっても私は主に逆らう事はできない。ただ手をばたつかせて距離をとろうとするくらいだ。

 唇が首筋に触れる。魔力を介して四郎さまの意思が分かる。それは今の状況を望んでいた。

「何やってるかこの色ザルが」

 四郎さまが倒れた。

 双葉さまの踵が落ちている。それは四郎さまの意識をあっさり刈り取ったようだ。

「家内法度で色事は不許可ってるでしょ。このサルは。ただでさえ、同棲しているのを、許してやっているのに。前は『彼女は道具だから』とか、いいやがった時は弟がそんな鬼畜になったとは姉は悲しかったものよ」

「あの姉さ・・・」

「言い訳は見苦しいわ四郎」

 双葉さまは四郎さまを引っ張るとどこかに消えていった。

「四郎さま」

 身を整えて外に行くと、双葉さまが四郎さまをつめようというのかドラム缶を用意しているところだった。

「助けてくれ姉さん。出来心なんだよ」

「男はみんなそういうのよ。優しい姉は決して浮かび上がってこないコンクリの配合にしてあげるから。しっかり三途の川を反省の涙で溢れさせてちょうだい」

「双葉さま」

 声をかけると双葉さまは、

「家内法度は絶対だから。でも同意の上でだったら、罪は二人で分け合っても許すけど」

 二人で沈めばどうにか脱出できるだろうか。

「分かりました」

 双葉は邪笑を浮かべ、

「じゃあしょうがないわ。あと、甕星ちゃんが四郎を川にほうり込むだけで許して上げる」

「分かりました」

 私はすまきにされている四郎さまを持ち上げると歩きだした。

「助かったよ」

 その四郎さまの声を黙殺した。今考えているのは川に投げ込む事だけだ。

 最短距離で海老川に到達する。

「なんでこんなことするの」

 出来心と言ったのが頭を回っている。外の事はどうでもいい気がした。

「そっちがそうなら俺はあやまらないぞ」

 四郎さまはこの状況なのに目はまっすぐで、反省の気持ちはないようだ。

「操られたのは事実だよ。でも、俺はキスしたかった。あのそれ以外もしかかったけど」

「四郎さま、私は道具ですから。分かっていただけていると思いました」

 どうしてかここにいたくなかった。真っすぐに自分を見ている目がやるせなくてたまらない。

「君は道具じゃない」

 走り出した私の前に立つのは一人の少年だった。

 まずい。彼は・・・。

「エル、四郎さまを操ったのもあなたなの?」

「操る。彼には一つ二つアドバイスをしただけだよ。君にも必要かもしれないね」

 無言のまま切りかかった。刃と化した腕をエルは受け止めていた。このくらい彼はするだろう。

「堕ちた熾天使の涙から生まれた剣の精よ。君はどうして泣いているか分かるかね。君はそのように作られていないのだ。自然と振る舞いたまえ」

 エルの私と同じ瞳の中に私は落ちていった。
posted by 九十九屋さんた at 09:04| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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