2005年05月01日

恋愛10選 06.夏休みのお祭り

 用意された服は浴衣だった。初音さま、四郎さまのお姉様に着付けてもらい外にでる。

 今日は夏祭りだ。

 春から続いた天使病は勢いを止めていた。天使になった人々は外科的に羽をとったりして、巧妙に隠すようになり、街から天使の姿は消えた。

 もともと四郎さまにはそう関係のない話なのだ。巻き込んでしまったのはむしろ私だ。天使病になったものの中で、何かの意思を受けた者たちがいた。それを受けたものたちの一部は神の僕として私を狙ってきた。

 四郎さまはじっとこっちを見ている。

「何かおかしいでしょうか」

「いや」

 四郎さまは黙った。そんな発言に困るくらいおかしいのだろうか。

「四郎、照れてないで。しっかりエスコートね」

「ああ」

 手が差し出された。握られる事はあるけどそれはいつも戦いの場だったからこうされるのが不思議だった。

「いこう」

「え」

「そういうときは黙って手をとればいいの」

 初音さまに言われて手を伸ばした。四郎さまの顔が赤い。

「星祭りっていうんだ。本当は大熊座の、北斗妙見さまって神様のなんだけど、名前がきれいなんで。それらしい名前になったみたいだよ」

「そうですか」

「星は嫌い?」

「好きとか嫌いとか考えた事はありません」

 四郎さまは夕方の光の中で一つ輝く星を指差した。

「あれは金星。日本でも甕星って金星のことなんだ。つまりは明星さ」

「明星ですか?」

 四郎さまは私の目をじっと見ている。

「その名前なのが不思議?」

「ええ」

「自分の顔ってのは見ないもんなんだな。あの星の輝きに甕星の目ににているんだよ」

 金星に似ているのは確かに符合かもしれなかった。私のもともとの名前はあの星に係わり合いを持っている。

「それに明星だから」

「?」

「君がだよ。俺にとって明星なんだ。終わらないと思っていた夜が、君がきてから明けはじめた」
posted by 九十九屋さんた at 08:40| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック