2005年05月01日

恋愛10選 04.契約上の恋人

 何をしているのだろう私は。

 目の前を歩いて行く四郎さまを背後から見ながらそう思う。

 いつもの古着ではなく、正装に身を固めた姿ははっきりいって、かなりいい外見だと思う。

 私が魔具で武器であり、狙われているとしってから側から離さなくなった。人殻、人間の姿でいることは困るから、折衷案としてブレスレットになることになった

 だが、今日に限って置いていった。それもこちらが寝ているとでも思ったのかこっそりとだ。まったく不自然だ。

 何かあった時に困る。そう思いついていった。もちろん、人殻を身に着けて人間の姿でだ。

 湾岸のモールを抜け、着いたのは船だった。大型のそれは港に停泊したままで、レストランとホテルになっている。

 入って行くと簡単に通して貰えた。どうもどなたかのお着きと思ってもらえたようだ。

 中では宴が行わていた。

 踊っている人々の中に四郎さまを見つける。踊っている相手は美しい女性だった。

 回りを睥睨する女王の美しさだ。確かにその女性はこの場で誰よりも目立ち、美しい。

 時折四郎さまの耳元で囁くさまは親しげだ。見ているうちになぜかとても空しくなる。

 私は何をしているのだろう?

 空しくなって戻ろうとした時に気づいた。魔力が交じっている。

 まだ微かだがそれは少しづつ濃さを増している。船の上の方から魔力という霧を振りかけているイメージだ。

 それは少しづつ浸透している。だが、誰も気づいてはいない。

 源を見なくてはならない。そう思って外に出る。

 翼の生えた紙がひらひらと宙空を舞っている。呪詛を含んだ紙だ。飛び込んでいって破壊する。一つ二つと。それは何となく気が晴れる行為だ。

「そこまでだ」

 現れたのは四郎さまだった。そしてこちらを見て何とも言えない顔をする。

「どうしているんだ」

「通りすがりです」

 嘘だと四郎さまがいうことはなかった。背後にそれがいたからだ。

「何だ」

 飛び下がった後を薙いだのは黒い触手。私が切り落とした紙から染み出した呪詛が固まっていた。

「お前か」

 四郎さまは触手を叩き落とした。半ば実体のないそれを見ながら四郎さまは目を細めた。

「四郎さま」

 飛び込みながら四郎さまに身を預ける。そのまま人殻を捨てて手甲となって身につく。

「受けろ」

 四郎さまは叫んだ。同時に触手に向かい放った。魔力が構造を破壊した。どこか遠くで壊れる音がした。呪詛の塊を過程を経ずに力づくで返したのだ。返された方が恐らく大きなダメージを受けているだろう。 

 離れながら人殻をまとうと、四郎さまは困った顔で見ている。何か顔を見ているのが照れ臭くなり立ち去ろうとすると

「待って。何か勘違いしているかもしれないが、今日は仕事だ」

「そうですか。分かりました」

「ちょっと何もめてんの」

 声をかけてきたのは先程一緒に踊っていた人間だ。手には血を吐いている男をひきずっている。それが呪詛を放ったものであるのが分かった。

「いじめてるの。爺ちゃんに言われたでしょ。女の子は大切にって」

「いじめるわけあるか。こいつは姉の双葉、こっちは」

「はじめまして。甕星ともうします」

 私は控えめに頭を下げた。

「この娘か、珍しくずっと側にいるっていう娘は。雹くんとばかりいるからそういう趣味かと思ってた」

「アホか」

 そういうと四郎さまは私の手を引っ張った。

「もうこんなのこりごりだぞ。ふう姉ちゃんが弄んだ男に巻き添えをくらって、怒れれるのいやなんだからな」

「はいはい。」

 私は怒ってなんかいないのに。
posted by 九十九屋さんた at 08:37| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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