2005年05月01日

恋愛10選 03.君を助けなきゃ

「甕星」

 心配しているのが感じられた。

 学校帰り不意に起こった戦闘。数は三人で中には銃を持つものもいる。今は私を心配している時ではないのに。そんな怒りを覚えた。

 銃を何発か受けたところで問題はない。この姿は魔力で、人殻、人間の姿をまとっているに過ぎない。傷もつけば血も出るかそれは錯覚だ。しかし四郎さまはそうではない。人間だ。銃はたやすく人の命を奪う。

 私は四郎さまの前に立った。四郎さまが何と言おうが私はこうするためにここにいる。

「さらばだ『堕天使の涙』」

 相手は私の正体を知っている。銃弾が放たれた。反応が遅れた。まともに受けたそれは私の体はそぎとっていった。

 私は恐怖した。銃は一見100年以上前の拳銃に似ている。だが、その表面に描かれた紋章は、魔術によるものだ。その銃がただの品物でないのを示している。その素材は金。錬金術の物質的な到達点である黄金の破魔の銃。私の持つ魔力を強制的に物質化することで私を損なったのだ。

「悪魔よ使者よ。打ち砕かれよ」

 狙いは四郎さまではなく私だったのだ。

「あの方の望みを邪魔する要素は全て取り除く」

 銃が構えられた。響き渡る銃声。

 四郎さまの右手が男の手を跳ね上げ、銃弾は空に向かい放たれた。残った右手の掌が男のこめかみをとらえると男はそのまま倒れる。

「貴様」

 脇から飛び込んできた男の蹴りが四郎さまに向かう。蹴りを交わさず左拳で叩き落す。足を折られたのか男は叫びを上げて倒れる。

 研ぎ澄まされた動きだった。それは私の思っていた四郎さまとまったく違った。

「なるほどなるほど。その魔女をかばうのなら、最初から手加減などせねばよかったわ」

 男が変わる。ゆっくりと背中に見える光が巻き上がり、大きな翼と化した。空から男だけに降りる光が男を照らし出す。体つきは二廻りは大きくなった。

「なんだお前は?」

「御使い」

 それでも四郎さまは殴りかかった。だが、拳は触れることはもない。御使いとはいわゆる天使だ。人の勝てる相手ではない。

 弾かれて飛ばされる。地面に立って受身をとったところに御使いが仕掛ける。四郎さまの体は宙高く飛ばされ、地面に叩きつけられた。

「四郎さま。あなたはどうしてそうなんですか」

 四郎さまの手をとった。

「まだ、戦いますか?」

「ああ。君を守らないと」

「それは私の役目です」

 人間の姿である人殻を解除する。体が消えて、武器としての姿を見せていた。私の本当の姿は武具というイメージだ。主人のもっともふさわしい武器と化して主人を守る。今の私は手甲と化して四郎さまの手にはまっている。

「これは」

「四郎さまが望んだのは守る力でしょ」

「そうだな」

 四郎さまは立ち上がった。四郎さまの体は私の発する魔力を注入され今までにない力を持っているはずだ。けれども、初めての装着。受けても一撃が限度のはずだ。

 四郎さまは飛び込んだ。御使いの胸に拳が触れる。

「愚かしいな」

 効かないように思えた。だが、それは一瞬だ。四郎さまの拳技は衝撃による内部からの破壊だ。その技に私の魔力を加える。御使いの体が大きく震えたと思うと、内側から爆ぜていった。破壊していくのはあくまで御使いとしての構造。それが破壊され残ったのは先程の男だ。

「ばかな」

 人殻をまとい、人の姿になると四郎さまの背後に立つ。

「もう甕星には手を出すな」

 四郎さまはそれだけいうと大きくふらついた。その体を支えながら、四郎さまの所に来て初めて悪くないように思えた。
posted by 九十九屋さんた at 08:35| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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