2005年04月30日

ファーブニル 

SS 宝を守りしもの  

 地面が揺れ動く音を聞きながら、シークフリートは剣の柄を握る手を緩めた。

戦いは緊張の連続だ。だが、余計な力が入っていれば、剣が思うような力を発揮できないのをジークフリートは知っていた。

 音が近づいてくる。

 ドラゴンがただ一日ただ一度、泉に水を飲みに来るという。それが奥深い巣穴の中に隠れるドラゴンが姿を現す時だった。

 ジークフリートは飛び出した。鋭い剣が突き出され、ドラゴンの心臓を抉る。

 ジークフリートは笑った。確実に仕留めた。そう思える一撃だった。それも一瞬の事、鋭い一撃を受けながらドラゴンは暴れた。

 ジークフリートはドラゴンから離れた。

 溢れる毒の息、そして岩を砕く巨大な尾。嵐のようなその様。

 ジークフリートは攻撃をすることはせずに待っていた。それは怯えての事ではない。ジークフリートほどの勇者ならばそれを交わし踏み越え、さらに攻撃をすることもできた。

 だが、彼は自分の剣が致命傷である事を信じていた。

 ドラゴンの動きが鋭さを失い、徐徐に緩慢になっていく。ただ、その目はジークフリートから外れる事無く睨みつけている。いや、その瞳に映るのはジークフリートではない。

「早くやってしまえジークフリート」

「師匠」

 ジークフリートの後ろには一人の老ドワーフがつきしたがっていた。

 ドラゴンは笑った。その口からはっきりとした人の声が漏れる。

「若者よ、この財宝にはロキやオーディーンの黄昏た神々の呪いが込められている。手に入れたら背中に気をつけることだ」

 ドラゴンはそのまま倒れ動かなくなった。

 それがドワーフとして生まれ、莫大な宝を手に入れた事からドラゴンとなり

宝を守ったファーブニルの最後だった。





 

〜ニーベルングの指輪〜[由来]

 ファーブニルはもともとは魔法を使う小人(ドワーフ)だったのです。彼は父と弟と共に莫大な財宝を洞窟で見つけました。しかしその黄金は手に入れたものを呪う力が込められていたのです。ファーブニルは呪いかそれとも黄金の光に魅せられたのか、父親を殺し、弟を追い出し、財宝を自らのものとします。しかし小人である自分では強い騎士がくればたちまち黄金を奪われてしまうと思ったファーブニルは魔法でドラゴンになり、宝を守ることになったのです。

 弟はそれを奪い返すために自分の弟子となったジークフリートを利用し、ファーブニルを殺させます。そしてジークフリートの隙を見て殺し、宝を奪おうとします。しかし、ファーブニルの心臓を食べ、鳥の言葉の分かるようになったシークフリートにより殺されてしまうのです。

 このように黄金の呪いはすさまじいもので、後にジークフリートも呪いにより滅ぼされます。それら一連の物語が有名な歌劇『ニーベルングの指輪』なのです。



 

〜イギリスと北欧〜 [余談]

 ドラゴンは宝を守っているもので、勇者に倒される。この黄金パターンに立っているのがファーブニルとジークフリートの話です。これは後にキリスト教系の説話にも利用され、『不死身のジークフリート』の話にもなりました。

 さて宝を守っている竜を倒し、宝を手に入れる。このパターンは世界中の神話に見る事ができます。

 ギリシア神話では『アルゴー探検船の冒険』に出てくる竜は、樫の樹に下げられた黄金羊の毛皮を眠る事無く見張っています。『ヘラクレスの冒険』では黄金のリンゴを守るラドンが出てきます。そして忘れてはいけないのがペルセウスに退治されたドラゴンです。アンドロメダ女王を救い出すために殺されたかの竜は、民俗学のパターンとして知られ、日本では八岐の大蛇などが上げられます。

 ドラゴンは富の象徴であると言うのは共通のようです。
posted by 九十九屋さんた at 17:16| 千葉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 白澤図 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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